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統合失調症・主な抗精神病薬

抗精神病薬は、現在、定型タイプに非定型タイプの新タイプが加わり治療の選択肢が広がっています。しかし、薬には向き不向きがあるので医師の処方に従って服用しましょう。統合失調症に使用される主な抗精神病薬について紹介していきます。

「定型抗精神病薬」と「非定型抗精神病薬」に分類

薬には作用の違いがある
抗精神病薬は「定型抗精神病薬」と「非定型抗精神病薬」に分類されますが、薬が体内に入ってからの作用ははっきりせず、何をもって定型・非定型とするのか明確な基準は現在はありません。ただ、抗精神病薬には脳の神経伝達物質を遮断する働きがあり、定型タイプは主に脳内のドーパミン受容体に作用します。一方、非定型タイプはドーパミン受容体に加え、さらに多様な受容体に作用する、という違いがあることが知られています。また、非定型抗精神病薬は、作用の違いから、次のように分けることもあります。

SDA

(セロトニン・ドーパミンアンタゴニスト)の略。アンタゴニストとは、体の中の化学物質を「働かなくさせる」という意味で、SDAは、神経伝達物質の中のセロトニンとドーパミンの受容体を遮断するように作用します。特にセロトニン受容体への遮断作用が強く、セロトニンによって調節されているドーパミンの放出が促進されるので、錐体外路症状(体の動きがおかしくなる副作用)が少ないとされています。

MARTA

マルチアクティング・レセプター・ターゲット・アンチサイコティックス)の略で、「多元受容体標的化」と訳されます。ドーパミンやセロトニンの受容体だけでなく、さまざまな神経伝達物質の受容体にくっつき伝達物質の作用を遮断します。

DSS

(ドーパミン・システム・スタビライザー)の略。ドーパミンの経路を完全に遮断せず、どんな条件下でもドーパミン・システムを安定させます。

新しい薬が必ずしもその人に合うとは限らない

抗精神病薬は、1950年代初期に[クロルプロマジン」が登場して以来、化学構造の異なる多くの薬が作られてきました。2000年代に入ってからも新薬の開発は続けられ「アリピプラゾール」といった新世代の薬も発売されています。しかし、新しい薬が必ずその人に有効とは限りません。現在、抗精神病薬の処方は非定型抗精神病薬を中心とする流れにありますが、しかし、急性期の激しい症状をしずめたり、回復を助けるためには、現在も定型タイプの薬は必要不可欠な薬です。薬の効果は個人によって違いがあり、向き不向きがあります。別の薬に切りかえると、次のようなことが起こる可能性があるので、自己判断せずに、医師とよく相談するようにしてください。

薬の切りかえで起こりうる変化

●別の薬が加わることで、副作用が強くなったように感じる。
●それまでの薬の減量や中止に伴い、精神症状が悪化する可能性がある。
●幻聴や妄想体験が強くなったり、恐怖感が再燃する可能性がある。
●不安やあせりが出たり、憂うつになったり、感情の起伏が激しくなる可能性がある。

主な抗精神病薬の種類と働き

定型抗精神病薬

定型抗精神病薬の種類と働き

クロルプロマジン

【商品名】コントミン、ウインタミン等

【特 徴】鎮静効果。幻覚・妄想・興奮にも有効

レボメプロマジン

【商品名】ヒルナミン、レポトミン等

【特 徴】鎮静・催眠効果、情動安定作用が高い

ゾテピン

【商品名】ロドピン等

【特 徴】鎮静効果。陰性症状・認知機能の改善

プロペリシアジン

【商品名】ニューレプチル等

【特 徴】高い攻撃性に有効

フルフェナジン

【商品名】フルメジン

【特 徴】幻覚・妄想、不安・緊張感に有効

ハロペリドール

【商品名】セレネース等

【特 徴】幻覚・妄想、不安・緊張感に有効

ブロムペリドール

【商品名】インプロメン

【特 徴】幻覚・妄想、不安・緊張感に有効

非定型抗精神病薬

SDAの種類と働き

リスペリドン

【商品名】リスパダール

【特 徴】幻覚・妄想に有効。副作用(錐体外路症状)が少ない

ペロスピロン

【商品名】ルーラン

【特 徴】幻覚・妄想に有効。陰性症状・神経症状にも効果が認められている

MARTAの種類と働き

オランザピン

【商品名】ジプレキサ

【特 徴】陰性症状・抑うつ症状の改善

フマル酸クエチアピン

【商品名】セロクエル

【特 徴】陽性症状・陰性症状・認知機能の改善

DSSの種類と働き

アリピプラゾール

【商品名】エビリファイ

【特 徴】陽性症状・陰性症状の改善。副作用が少ない